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著者:
夏目漱石
朗読:
田中尋三
出版:
アイ文庫
収録:

掲載日 ジャンル:

商品紹介

著:夏目漱石 朗読:田中尋三

「吾輩は猫である。名前はまだ無い」 誰もが知っているこの一節で始まる、夏目漱石の処女作にして一躍有名作家とした長編小説。

約100年前の作品が今なお日本人の心をとらえて放しません。
露戦争前後の風俗を背景に、高校の英語教師宅に飼われる名無しの猫の視点で描き出される人間喜劇と、痛烈な社会批判。飼い主の教師・苦沙弥先生、友人の美学者・迷亭、物理学者・寒月、その他続々登場する人々もこぞって秀逸で、現代人も抱腹絶倒間違いなし!
朗読の田中尋三は、多数のキャラクターを演じ分けて名作を生き生きと現代に蘇らせます。
総時間21時間の超大作です。ゆっくりゆっくりお聞きください。

©アイ文庫

Wikipedia

作品 吾輩は猫である

著者 夏目漱石

処女作追懐談/夏目漱石

私の処女作――と言えば先ず『猫』だろうが、別に追懐する程のこともないようだ。ただ偶然ああいうものが出来たので、私はそういう時機に達して居たというまでである。

 というのが、もともと私には何をしなければならぬということがなかった。勿論生きて居るから何かしなければならぬ。する以上は、自己の存在を確実にし、此処に個人があるということを他にも知らせねばならぬ位の了見は、常人と同じ様に持っていたかも知れぬ。けれども創作の方面で自己を発揮しようとは、創作をやる前迄も別段考えていなかった。

 話が自分の経歴見たようなものになるが、丁度私が大学を出てから間もなくのこと、或日外山正一氏から一寸来いと言って来たので、行って見ると、教師をやって見てはどうかということである。私は別にやって見たいともやって見たくないとも思って居なかったが、そう言われて見ると、またやって見る気がないでもない。それで兎に角やって見ようと思ってそういうと、外山さんは私を嘉納さんのところへやった。嘉納さんは高等師範の校長である。其処へ行って先ず話を聴いて見ると、嘉納さんは非常に高いことを言う。教育の事業はどうとか、教育者はどうなければならないとか、とても我々にはやれそうにもない。今なら話を三分の一に聴いて仕事も三分の一位で済まして置くが、その時分は馬鹿正直だったので、そうは行かなかった。そこで迚も私には出来ませんと断ると、嘉納さんが旨い事をいう。あなたの辞退するのを見て益依頼し度くなったから、兎に角やれるだけやってくれとのことであった。そう言われて見ると、私の性質として又断り切れず、とうとう高等師範に勤めることになった。それが私のライフのスタートであった。

 ここで一寸話が大戻りをするが、私も十五六歳の頃は、漢書や小説などを読んで文学というものを面白く感じ、自分もやって見ようという気がしたので、それを亡くなった兄に話して見ると、兄は文学は職業にゃならない、アッコンプリッシメントに過ぎないものだと云って、寧ろ私を叱った。然しよく考えて見るに、自分は何か趣味を持った職業に従事して見たい。それと同時にその仕事が何か世間に必要なものでなければならぬ。何故というのに、困ったことには自分はどうも変物である。当時変物の意義はよく知らなかった。然し変物を以て自ら任じていたと見えて、とてもも一々此方から世の中に度を合せて行くことは出来ない。何か己を曲げずして趣味を持った、世の中に欠くべからざる仕事がありそうなものだ。

(中略)

さて正岡子規君とは元からの友人であったので、私が倫敦に居る時、正岡に下宿で閉口した模様を手紙にかいて送ると、正岡はそれを『ホトトギス』に載せた。『ホトトギス』とは元から関係があったが、それが近因で、私が日本に帰った時(正岡はもう死んで居た)編集者の虚子から何か書いて呉れないかと嘱まれたので、始めて『吾輩は猫である』というのを書いた。所が虚子がそれを読んで、これは不可ませんと云う。訳を聞いて見ると段々ある。今はま丸で忘れて仕舞ったが、兎に角尤もだと思って書き直した。

 今度は虚子が大いに賞めてそれを『ホトトギス』に載せたが、実はそれ一回きりのつもりだったのだ。ところが虚子が面白いから続きを書けというので、だんだん書いて居るうちにあんなに長くなって了った。というような訳だから、私はただ偶然そんなものを書いたというだけで、別に当時の文壇に対してどうこうという考も何もなかった。ただ書きたいから書 き、作りたいから作ったまでで、つまり言えば、私がああいう時機に達して居たのである。もっとも書き初めた時と、終る時分とは余程考が違って居た。文体なども人を真似るのがいやだったから、あんな風にやって見たに過ぎない。

 何しろそんな風で今日迄やって来たのだが、以上を綜合して考えると、私は何事に対しても積極的でないから、考えて自分でも驚ろいた。文科に入ったのも友人のすすめだし、教師になったのも人がそう言って呉れたからだし、洋行したのも、帰って来て大学に勤めたのも、『朝日新聞』に入ったのも、小説を書いたのも、皆そうだ。だから私という者は、一方から言えば、他が造って呉れたようなものである。

夏目漱石全集〈10〉 (1972年) (筑摩全集類聚)

青空文庫

ライターズレビュー

や~・・ 長かった・・・・

面白いんだけど長い、長いよ!

そういや、中学生の時読もうとして長すぎて挫折したな~ 『坊ちゃん』は中坊にもおもしろかったのだけれども。夏目漱石作「ユーモアのきいた風刺」小説二大巨頭ですが、『猫』のほうが大人向きですね。長さだけでなく。なんだかウナギのようにとらえどころのないお見合い話があったり、ご近所と揉めてみたり、子供がぐずったり、親戚が来たり、おっさんがぐちってたり、偉そうなことを言ってたり・・・そういう、日々のあれこれのスケッチ、雑事がぱたぱたとつづくばかりで、はっきりとしたストーリーがあるわけではない。そのひとコマひとコマがおかしく、ときには身に覚えがあって慌てたりして、ああワタクシも大人になったなあ。ちゃんと面白い。

そう、面白い。

んですが、長いんですよ!一気に聞くもんではないよ!!!おいしいお菓子でも、箱でいただいたのを一気喰いしたら胸焼けしますよ!

移動の途中に、家事をしながら、ナイトキャップがわりに、・・・少しずつ、楽しみながらつまんでいっていただくのがオススメです。

登場諸氏

 吾輩  猫。主人公。
 珍野苦沙弥  人間。「吾輩」の飼い主。中学校の英語教師。
 珍野夫人  人間。珍野苦沙弥の細君。
 珍野とん子  人間。珍野家の長女。
 珍野すん子  人間。珍野の次女。
 珍野めん子  人間。珍野家の三女。「当年とつて三歳」。通称「坊ば」。
 おさん  人間。珍野家の下女。名は清。
 三毛子  猫。隣宅の雌。
 二絃琴の御師匠さん  人間。三毛子の飼い主。
 迷亭  人間。苦沙弥の友人。美学者。
 水島寒月  人間。苦沙弥の元教え子。理学士。
 越智東風  人間。寒月の友人。新体詩人。
 甘木先生  人間。苦沙弥の主治医。
 八木独仙  人間。哲学者。
 黒  猫。車屋の大柄な雄。
 八っちゃん  人間。車屋の子供。
 金田  人間。近所の実業家。苦沙弥に嫌われている。
 金田鼻子  人間。金田の細君。
 金田富子  人間。金田の娘。
 鈴木籐十郎  人間。苦沙弥、迷亭の学生時代の同級生。工学士。
 多々良三平  人間。苦沙弥の教え子。法学士。六つ井物産会社役員。
 牧山  人間。迷亭の伯父。漢学者。
 雪江  人間。苦沙弥の姪、女学生。
 古井武右衛門  人間。珍野の監督下の中学生。
 吉田 虎蔵  人間。警視庁浅草警察署日本堤分署の刑事巡査。
 泥棒陰士  人間。水島寒月と酷似する容貌の窃盗犯。

関連書籍

吾輩は猫である (新潮文庫) [文庫] /夏目 漱石 (著)

吾輩は猫である(上) (講談社青い鳥文庫 (69‐2)) [新書] /夏目 漱石 (著), 村上 豊 (著)

贋作吾輩は猫である―内田百けん集成〈8〉 ちくま文庫 [文庫]/内田 百けん (著)

漱石の思い出 (文春文庫) [文庫]/夏目 鏡子 , 松岡 譲

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