商品紹介
夏。鎌倉の浜辺で、書生の「私」は「先生」に出会った……
「彼岸過迄」「行人」に続く漱石後期三部作の最後を飾る長編。上・中・下の三部構成で、明治後期から大正期にかけての典型的知識階級、もしくは、漱石いうところの高等遊民の精神の葛藤を描いていく。
日本近代小説がただストーリーを描くだけでなく、奥深い心理描写へと踏みこんでいくための礎となった作品ともいえる。
二部では「私」と家族との葛藤、三部では「先生」からの手紙文という形式を使い、小説という形式での人の生死に対する漱石の深い考察が示される。近代文学の金字塔ともいうべき作品で、この作品を避けて現代の文学を語ることはできない。
【朗読者について】
「夢十夜」で深みのある朗読世界を聴かせてくれた女優の岩崎さとこが、難しい長編作品に取りくみました。とにかく、集中力をとぎらせることなく、最後までじっくりと読みきった力には、驚くべきものがあります。
Wikipedia
作品 こゝろ
著者 夏目漱石
ライターズレビュー
初めて読んだのは教科書がきっかけで。
2回目は本棚の整理中にふと手にとって。
それからも、1・2度読み返したように思う。
そして、今回。
本作は三部構成になっている。
上 先生と私
中 両親と私
下 先生と遺書
初めて読んだ時は、『下』がすごいと思った。先生とKの話を息を詰めるようにして読んだ。読むのがつらいけれど、続きがきになる、でもつらい、のを読まずにはいられない、初めての小説だった。ドロリとした話。乾いた筆致。
次は、先生の夫婦関係が気になった。
「私は世の中で女というものをたった一人しか知らない。妻以外の女はほとんど女として私に訴えないのです。妻の方でも、私を天下にただ一人しかない男と思ってくれています。そういう意味からいって、私たちは最も幸福に生れた人間の一対いっついであるべきはずです」
はずなのです・・・
私と先生の関係性を考えたこともある。
「信用しないって、特にあなたを信用しないんじゃない。人間全体を信用しないんです」
そんな先生が私に手紙を送ったのは
「一旦いったん約束した以上」の義務?
「私は何千万といる日本人のうちで、ただあなただけに、私の過去を物語りたい」?
打ち明け話は家族や友人よりも、タクシーの運転手の方がしやすいのと同じ?
自殺をするひとの、その時の、世界の矮小化をかんがえさせられたときもある。
生きるというのは難儀なものだ。――けれども生まれたからには、生きる義務を全うせねば、と、思えるうちは生きていけるということか?
今回、胸を突いたのは『中』――というか、田舎の父母であった。
『こころ』は緊張感があり読みやすく、相手をを選ばずすすめられる。
そのうえ、よむ人よむ度ごとに、気づきがある。
正にに名作である。
『こゝろ』を飾ったものたち
▼ 漱石自身の装丁で、自費出版により刊行された。
画像は独酌独語さんよりお借りしました。
こころの舞台
リスナーズレビュー
漱石といえば『吾輩は猫である』と思っていた私は、彼の作品がここまで深いものだとは思ってもいませんでした!(高校2年生 女性)
仮にも大の男が女に振り回される話か、くだらない、と思っていたが、そこまで浅くなかった。しかし先生はもっとやりようがあったと思う。逃げただけではないか。(40代 男性)
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