浅草観世音の絵馬堂の前で、おまさは昔なじみの老人にばったり再会した。上方から江戸にかけてその道では知られた盗賊〔瀬音の小兵衛〕であった。5年も前に足を洗って江戸を去ったはずの小兵衛が、おまさに両手をついて「少ねえが二十両で、引きうけておくれ」と頼むのであった。――その夜、おまさは平蔵を訪ねた。「長谷川さまに、御ねがいがあって、まいりました」「なんだ、な?」
女賊

- 著者:
- 池波正太郎
- 朗読:
- 三好翼
- 出版:
- ことのは出版株式会社
- 収録:
- 1:08:15