風邪が快癒した平蔵は、むさ苦しくのびた月代と髭のまま古着物で市中見廻りにでかけた。京橋のたもとで平蔵に声をかけた者がある。堂々たる巨躰に立派な髭の男。先に〔笹や〕のお熊が、泣き虫の不良息子が鍾馗様みたいになって江戸に戻ってきたが「人間というもなあ、あも変わるものかね」と噂していた、高木軍兵衛その人であった。が、当の軍兵衛は平蔵の正体を知らなかった。 監督/吉田純子・編集/三好達也_林岳史
用心棒

- 著者:
- 池波正太郎
- 朗読:
- 三好翼
- 出版:
- ことのは出版株式会社
- 収録:
- 1:00:32