折から、江戸市中は平穏で〔下女泥〕騒ぎがあるくらいであった。それを忠吾にまかせ巣鴨村の三沢仙右衛門こと従兄の仙どのを訪ねた平蔵は、その帰りに通りかかった稲荷横丁の居酒屋からでてきた男に目を留めた。ずんぐりとした金壺眼の三十男。あれは確かに〔翻筋斗の亀太郎〕、平蔵自身が追い詰めたのをおそろしいほどの身のこなしで逃げ失せた門原の重兵衛一味の唯一の生き残りであった。 監督/吉田純子・編集/三好達也_林岳史
白と黒

- 著者:
- 池波正太郎
- 朗読:
- 三好翼
- 出版:
- ことのは出版株式会社
- 収録:
- 0:54:23