商品紹介
命がけの実利主義」ともいわれる剣豪・宮本武蔵の兵法。彼は、人生の最末期、熊本にある洞窟内にこもり命を削るようにして『五輪書』を書かれたと言われています。
いわば後の世にむけての武蔵の遺言の書ともいえるその一書を、今、まさに脂の乗ってきた朗読家・渡部龍朗が、剣豪と真剣でわたりあう気迫で読みあげました。
武蔵を偲ぶ書として。古兵法の世界への指南書として。ビジネス書として。哲学書として。人生をたたかう心得書として。さまざまな読み方(聴き方)を、奥深く堪能してください。
余談ながら、オリンピックのことを「五輪」と呼ぶのはこの『五輪書』が由来です。方丈記・雪女・武士道・茶の本につづく日本の心を伝える名著「五輪書」お楽しみください。
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ライターズレビュー
さて本作は『地・水・火・風・空」の五巻によって構成されているそうな。
順に粛々と聞いてゆく。
「・・国々所々に至り、
諸流の兵法者に行合ひ六十余度迄勝負をなすといへども、
一度も其利をうしなはず。
其程歳十三より廿八、九までの事也。・・」
しょっぱなからなんだかじまんたらしいなあと、それでもまあ剣豪なんだし言わせておくかと聞いてやっていたら。
「・・大形武士の思ふ心をはかるに、
武士は只死ぬといふ道を嗜む事と覚ゆるほどの儀也。
死する道においては武士斗に限らず、
出家にても、女にても、百姓已下に至る迄、
義理をしり、
恥をおもひ、
死する所を思ひきる事は、
其差別なきもの也。・・」
へえ、剣豪、嬉しいこと言ってくれる、と百姓出身の女は身を乗り出す。――ほうほう、なるほど、百姓女と武士の違いはそれか。じゃあ百姓女でも根性入れれば武士になれる?・・と耳をかたむけていると、
「・・兵法の道、
大工にたとへたる事・・」
ときた。――え?大工?にたとえていいの?兵法って、武士がほかならぬ武士であることの肝なんでしょ? 意表を突かれる。これが兵法にかなった話術なのか?おもろい!とイヤフォンを入れなおす。
「・・此一流二刀と名付くる事
二刀と云出す所、
武士は将卒ともにぢきに二刀を腰に付くる役也。・・」
武蔵といえば二刀流、二刀流といえば武蔵、といえるくらい(なはず)なのに、なぜ二刀流かというと、これか!?ただそれだけなのか!?
「一命を捨つる時は、
道具を残さず役にたてたきもの也。」
爆笑。そりゃそうだけどさ。そもそも何故二刀なのか、という考察は?刀一本の方が戦いやすいんだったら、一本うちに置いといたほうがただ歩くときも楽でより合理的では!?・・・などとあの世の剣豪にツッコミいれまくっていると、はなしは
「此法を学び得ては一身にして二十三十の敵にもまくべき道にあらず。」
「先づ気に兵法をたえさず、直なる道を勤めては、
手にても打勝ち、
目に見る事も人にかち・・」
ん~?なにやら兵法売り込み営業がはじまったぞ?
自慢爺復活かー!?
――いや、武蔵サン、おもろいわ!
のこり『水・火・風・空』の4巻も期待してまっせ!!
しっかし、「武士道とは死ぬことと見つけたり」でしられる『葉隠』の著者・山本常朝と宮本武蔵の対談、聞いてみたいですねえ~
名言
地の巻
死する道においては武士ばかりに限らず、出家にても、女にても、百姓已下に至る迄、義理をしり、恥をおもひ、死する所を思ひきる事は、其差別なきもの也。
たいゆう知る事、気の上中下を知る事、いさみを付るといふ事、むたいを知るといふ事、かようの事ども、統領の心持に有る事也。
あまりたる事はたらぬと同じ事也。
けふはきのふの我にかち、あすは下手にかち、後は上手に勝つとおもひ
水の巻
常にも兵法の時にも、少しもかはらずして心を広く直に(もつ事肝要也)。
見るとおもはずならふとおもはず、似せ物にせずして、則ち我心より見出したる利にして、常に其身になつて能々工夫すべし。
心を直にして、我身のひいきをせざるやうに心をもつ事肝要也。
観の目強く、見の目弱く、遠き所をちかく見、近き所を遠く見る事、兵法の専也。
ゐつく(固着する)はしぬる手也。
構えあって構えなし
先づ太刀をとつては、いづれにしてなりとも敵をきるといふ心也。
若し敵のきる太刀を受くる、はる、あたる、ねばる、さはるなどいふ事あれども、みな敵をきる縁なりと心得べし。
火の巻
兵法の戦に、其敵々の拍子をしり、敵のおもひよらざる拍子をもつて、空の拍子を知恵の拍子より発して勝つ所也。
敵のかほたてなほさざるやうに、たしかに追ひかくる所肝要也。
我身を敵になり替へて思ふべきといふ所也。
敵にわざをしかくるに、一度にてもちひずば、今一つもせきかけて、其利に及ばず
空の巻
空を道とし、道を空と見る所也。
空は善有り悪無し、智は有也、利は有也、道は有也、心は空也。
五輪書を書いたのは誰?
宮本武蔵は安土桃山時代~江戸時代の剣術家である「ようだ」。
実在はしていたようだが、あとはすべてあやふやである。半世紀ほど昔の(ほぼ)一般人であるからしかたがない。将軍家大名家に生まれていても、名前や生没年すらはっきりしない人物のほうが多い 。
武蔵関係史料として第一級資料といえるのは、まず養子・宮本伊織による【泊神社棟札】、公式資料ではなく、書物でもはなく、伊織が個人的に神社に奉納した1枚の板に墨書された文である。それ自体長文ではない中で武蔵にふれているのは
「作州之顕氏神免者天正之間無嗣而卒于筑前秋月城受遺承家曰武藏掾玄信後改氏宮本亦無子而以余為義子故余今稱其氏」
の部分のみ。わかるのは、①武藏が作州の神免なる者の死後養子となったこと ②武藏が後に宮本へ改氏をした事 ③武蔵にも子が無かったため伊織が養子となったこと の3点がすべてである。
そして、【小倉碑文】、伊織が武蔵の菩提を弔うために建立した、北九州市小倉手向山の山頂にある石碑に刻まれた文で、これこそが巌流島の決闘をはじめとする武蔵の主要な伝承の源であり、遺言まで言及されているが、五輪書もしくはそれとおもわれるものは出てこない。
そして、武蔵直筆とされる書状2点、書が2点、画が何点か・・ といったところ。五輪書に関することは触れられていない。
五輪書の直筆書は残っていない。
つまり、五輪書は宮本武蔵が書いたものだというのは、後世の推論でしかないわけである。
・・ま、古典なんてみんなこんなものデスヨネ~
関連:Wikipedia
リスナーズレビュー
・宮本武蔵が好きで、原文を読もうとしたが挫折。現代語訳ではものたらなく感じていたところすすめられた。聞くことはなんとかでき、3回目くらいから意味がわかってきた。もう何回か聞いたら原文を音読してみようと思っている。(50代 男性)
・愛読している漫画が身近に感じられました。今までよりもっとおもしろく読めそうです。(30代 女性)
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